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礼服スラックスの破れ・裂けを「かけつぎ・かけはぎ」で直す|大手スーツ店の買い替え提案の裏側

※この記事は、先日ご来店いただいたお客様の実体験に基づき、ご本人の快諾を得て構成したものです。
同じような悩みを持つ方の一助になればと、お客様と店主、それぞれの視点からお届けします。

【第1部:お客様の回想】階段で起きた悲劇と、冷たい「マニュアル」の壁

階段で起きた悲劇:礼服スラックスが裂けた瞬間

階段を上がっていた時に突然悲劇は起こった。
1段飛ばしで軽快に上っていたところ、2段飛ばしに階段を踏んだ時 嫌な音と共にスラックスは裂けてしまった。

冠婚葬祭用に購入した礼服なので、まだ数えるほどしか着ていない。
今回スラックスは歩幅を大きく広げてしまったため裂けてしまったが ジャケットに至っては新しいものとさほど変わらない。

裂けた箇所を確認すると、かなり広範囲なダメージだ。
さすがにこのままでは着用できない。
冠婚葬祭の席で
「あれ?あの人のズボン…」
と指摘される光景が想像につく。

このままにはできないと思い
まずは購入店でリペアの相談をすることにした。
「洋服のお直しいたします。」とのぼりも掲げている。
ジャケットとスラックスの両方を持って訪れた。

「直せない」のではなく「直さない」?業界のタイパ至上主義

まずは直るかどうかを訊ねてみた。
店員さんの回答は、
「直るけれどサイズとシルエットが大幅に変わる。」
とのことだった。
長く着ることを想定して購入したので、そっけない返事に少々落胆した。
すると、直して着るより新規で購入されてはいかがですか?
と、買い替えを提案された。

直せるかどうか相談するため訪れたので
新規の購入を提案されるとは想像もしていなかった。

最初から
お直しの相談には乗るつもりはないのではないか?

次第にこの店員に不信感が芽生え始めた。

大手スーツ専門店の「お直しのぼり」に隠された罠:期待が「不信感」に変わるまで

ジャケットは新しいものと変わらないため
この礼服を長く着たいという気持ちが強かったので
リペアの相談に訪れたのだ。
新規で礼服一式を購入し、 ジャケットを無駄にしてしまう気にはなれなかった。

そこで、スラックスのみ購入したいと申し出た。
しかし、そこでもマニュアル通りの回答に
冷や水を浴びせられたような気持ちになった。

「スーツはセットで販売しておりますので、スラックスのみの販売はしておりません。」

長く着るために色んな相談にも乗ってもらえそうだからと思い、
大手スーツ専門店で購入することにしたのだが
全くの見当違いだったようだ。

長く着るどころか
まだ着れるものを不用品のように扱われて
相談に来たことを後悔した。

不快感に満ちているところに
「ポイントがたくさんあるようですね。ポイントを使えば安く購入できますよ。」
と火に油を注がれた。

この店は私の服をみているのではなく
財布しか見ていないのだ。
押し売りが確信に変わるや否や、店を後にした。

お直しの専門店なら洋服を売り付けたりせず、
直るかどうか、客観的に判断してもらえるし 信用できるだろう。
と、スマホを取り出し「洋服お直し店」を検索した。

【第2部:店主の視点】職人が見た「破れの真実」と業界の歪み

職人が診断する「破れの正体」とバイアスの罠

その日は静かな日曜日だった。
予約のお客様はなかったので、ゆっくりと スカートの仮縫いの準備をしていた。

スーツバッグを下げた男性が歩いてくるのが見えた。

出迎えると
「予約していないのですが。」とおっしゃったので
ご予約なしでも大丈夫なことを告げ問診票に記入してもらった。

スラックスの股の辺りが裂けてしまったと記入されていた。

拝見したところ、後ろ中心の股に近い箇所に 損傷が見受けられた。
無理な力がかかったことで、縫い目のキワから生地が滑り落ちるように弾けてしまっていた。

この部分は生地がバイアス(斜め)になっており、
伸縮性がある反面、どうしても構造的に強度が低くなりやすい。
強い負荷がかかると、生地の繊維が耐えきれず『目寄れ』やパンクを引き起こしやすい部分でもある。

職人が提案する「かけつぎ(かけはぎ)」という伝統技術

※関西では「かけつぎ」関東では「かけはぎ」と呼ぶのが主流です。

礼服とのことなので
なるべく目立たない方が良いだろうと考え
「かけつぎ」を提案した。

かけつぎは日本古来の伝統的な修理技術だ。
ミシン刺しやミシンたたきと呼ばれる方法と違って
元の状態に近くなる。

料金が高くなるが
仕上がりのクオリティを求める方には おすすめの方法だ。

このように破れた衣類の補修方法は
「かけつぎ」または「ミシン刺し」
という仕上げ方がお直し業では定石となっている。

今の業界事情は分からないが 私が若いころは先輩方からそう教えてもらった。

なぜ大手に「お直し」を任せてはいけないのか?タイパ至上の裏側

お客様が当店の門をたたく前に訪れた大手スーツ専門店(礼服の購入店)では 縫い合わせるだけの簡易な方法を提示されたとのことだった。
しかし、左右不ぞろいになるし 股ぐりのカーブのラインが変わってしまうため 縫い合わせるだけならできるが、 着心地までは再現できない。

もしも、提案通りに仕上げたなら
常に食い込んでかなり着心地の悪いスラックスに仕上がることが予想される。

先日の
「リックオウエンスのバウカーゴパンツ」
の補修のように
縫い合わせるだけの方法は、短時間で仕上げることができ、 簡単なため(パートさんでも可能)、主流になっているのかもしれない。

昔ながらの手法よりも
タイパ重視になるのは
昨今の物価高や人件費の高騰が影響している可能性が高い。

これも人件費が関係するが
お針子さんと販売員を別々に用意するとなると
余分な人件費が必要になる。
おそらく対応した店員さんは
専門知識のない通常の洋服販売員で、お針子さんではないと思う。

数年前から、大手スーツ専門店でも
「洋服お直しします」
という、のぼりを見かけることがあった。

「スーツをお直ししてしまうと、肝心のスーツの売れ行きが悪くなるのではないか?」
と私は思っていた。
また、
「もしかすると、お直しの相談にきたスーツの購入層に新しいスーツを売り付けるための餌ではないか?」
との疑念も持っていた。

この度、お客様のお話を伺って確信した。
どうやら私の推察は当たっていたようだ。

SDGsの裏にある欺瞞と、愛着ある服を守るためにできること

SDGsの流行に乗った
大手企業の口先だけの「持続可能な社会」の提案は、
ファストファッション以下の対応と知って、一気に鼻白んだ。

もしも大手スーツ専門店でのリペア相談が
希望する結果にならなかった時、
在庫処分品を押し付けられ、 愛着のあるスーツを廃棄させられてしまう前に
ぜひ、お近くの洋服お直し専門店に 相談してみて欲しい。