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【なぜ委託?】ハンドメイド作家が「手数料を払ってでも」委託販売を選ぶ理由と、その先の未来

スレッズなどのSNSでよく見かける**「ハンドメイド委託販売募集」**の投稿。
Creemaやminneといったオンラインサイトがあるのに、なぜわざわざ委託料を払ってまで委託販売を選ぶんだろう?そう思ったことはありませんか?

この疑問は、多くのハンドメイド作家さんが一度は抱えるものかもしれません。今回は、そんな委託販売の**「リアル」**に迫り、作家さんが手数料を払ってでも委託販売を選ぶ理由、そしてその先のキャリアパスについて深掘りしていきます。


handmade_shop

委託販売の「表の顔」――手数料を払う価値とは?

ハンドメイド作家が委託販売を選ぶ主なメリットは、多岐にわたります。

1. 集客・宣伝の手間が省ける

自分でECサイトを運営する場合、サイト制作や商品登録だけでなく、最も大変なのが集客と宣伝です。SNSでの告知、SEO対策、広告運用など、作品を販売するまでに多くの時間と労力がかかります。

一方、委託販売の場合、委託先の店舗やオンラインショップはすでに顧客を抱え、独自の集客チャネルを持っています。作家さんは作品づくりに集中でき、販売に関するマーケティングの手間を大幅に削減できるのが大きなメリットです。

2. 実店舗での販売機会が得られる

Creemaやminne、BASEといったプラットフォームはオンライン販売がメインです。しかし、ハンドメイド作品の中には、実際に手に取って色味や質感を確認したいというニーズが高いものが多くあります。委託販売であれば、実店舗での展示・販売を通じて、オンラインだけではリーチできない層の顧客にアプローチできます。イベント出店(ポップアップストア)なども同様ですね。

特に、オンラインショップのみで委託販売を請け負っている場所よりも、実店舗でも販売している委託先を選ぶと有利です。

オンライン販売との併用は可能?

結論から言うと、多くの場合、委託販売とCreemaやminneなどのオンライン販売は併用が可能です。ただし、委託契約の内容によって条件が異なります。(ご自身でオンライン販売する予定がおありでしたら、契約前に委託先に確認してみましょう。)

一般的な委託販売契約では、下記のような取り決めがなされることが多いです。

●独占契約ではない場合:

特定の店舗やサイトでの独占販売ではなく、他のオンラインサイト(Creema、minne、BASEなど)やイベントでの販売も許可されているケースがほとんどです。この場合、作家さんは自身の判断でさまざまな販売チャネルを利用できます。委託先も、あくまで自社の顧客層に作品を届けることを目的としており、作家の活動を全て制限する意図はあまりありません。

●独占契約の場合:

非常に稀ですが、特定の期間や特定の作品について、委託先での独占販売を求めるケースも存在します。これは、委託先がその作品に対して多大なプロモーション費用を投じる場合や、その作品のブランド価値を独占的に高めたいと考える場合に起こり得ます。この場合は、契約に違反しないよう、他のチャネルでの販売は制限されます。

多くの委託契約は、作家の活動を縛るよりも、多様な販売機会を提供することに主眼を置いています。特に、オンラインでの販売と実店舗での委託販売は、顧客層や購入体験が異なるため、互いに補完し合う関係だと捉えられることが多いです。

ただし、複数のチャネルで販売を行う際には、いくつかの注意点があります。

BASEなどのECサイトを始める時は、SNS(Instagramでの宣伝や連携)は外せない戦略です。オンラインでの集客には、SNSを活用した積極的なアプローチが不可欠だと覚えておきましょう。

また、自社オンラインショップと委託販売を併用するときは、在庫管理の徹底に細心の注意を払う必要があります。同じ商品を複数の場所で販売する場合、ダブルブッキングによるお客様へのご迷惑を避けるためにも、リアルタイムでの在庫連携や厳重な管理体制を整えることが重要です。


handomade_denim/adidasのリメイクデニム

さて、実店舗での販売メリットについて触れましたが、実は先日、私も洋服のお直しで、まさに「ハンドメイドの魅力」を再認識する機会がありました。それは、お客様からリメイクデニムのお直しをご依頼いただいた時のことです。

ご依頼いただいたデニムは、お客様が念願かなってやっと手に入れた、オーソドックスなブルーデニムとadidasのジャージの異素材ミックスの世界に一つだけのリメイク商品でした。まさに「一点ものの芸術品」といった風合いです。お直しをしながら、その商品への強い想いや、手元に届くまでのストーリーをひしひしと感じました。
オンラインの画面越しでは伝えきれない、そうした「作品の背景」「手仕事の温もり」は、やはり実物を前にした時にこそ最大限に伝わると強く感じたのです。

お客様がなかなか手に入れることができなかったリメイクデニムが、また長く愛用されるようにお直しを施し、無事にお客様のもとへ納品できた時は、私も心から嬉しく思いました。

この経験から改めて感じるのは、ハンドメイド作品は販売して終わりではなく、その後も長く愛用してもらうための「アフターケア」も非常に大切だということです。例えば、縫製不良や体型の変化によるサイズ調整など、お客様が安心して使い続けられるよう、信頼できるお直し先や修理店を確保しておくことも、作家さん自身のブランド価値を高め、顧客との長期的な信頼関係を築く上で考慮すべき点だと言えるでしょう。

このように、ハンドメイド作品は、実際に手に取ってもらうことで、その質感や細部のこだわりが伝わり、さらには作り手と使い手の間にストーリーが生まれることがあります。実店舗での委託販売は、まさにこの「五感で感じる体験」を提供し、お客様と作品、そして作家さんとの特別な繋がりを生み出す場となり得るのです。

handomade_denim/adidasのリメイクデニム・全体

3. ブランドイメージの向上・認知度アップ

人気のあるセレクトショップやコンセプトショップに作品を置いてもらえることは、作家さんにとってブランドイメージの向上に直結します。また、そのショップの既存顧客層に作品を見てもらえることで、自身の認知度アップにも貢献します。

4. 運営の手間とコストを削減できる

自分でECサイトを運営する場合、初期費用や月額費用、決済手数料、在庫管理、発送業務など、販売に関するあらゆる業務を自分でこなす必要があります。もし一人でこなせなくなった場合は、人を雇う必要があり、人件費が発生します。

委託販売であれば、これらの運営に関する手間とコストを委託先が担ってくれるため、特に多忙な作家さんや販売経験が少ない作家さんにとっては魅力的な選択肢となります。手数料はかかりますが、その分の時間的・精神的なコストを考慮すれば、合理的と考える作家さんも少なくありません。

5. 多角的な販売戦略の一環

Creemaやminne、BASEといったオンラインサイトでの販売と並行して委託販売も活用することで、より多くの顧客にリーチし、販売チャネルを多角化できます。Instagramなどのネット利用頻度が低い層へのアプローチも可能になるでしょう。リスクを分散し、売上を安定させるための一つの戦略とも言えます。

もちろん、手数料がかかる分、利益率は下がります。そのため、全ての作家さんが委託販売を選ぶわけではありません。自分でECサイトを運営して高い利益率を目指す作家さんもいれば、委託販売を上手に活用して効率的に販売機会を広げる作家さんもいます。利益率を上げるために効率化できる点がないかを常に考える姿勢も大切です。

作家さんそれぞれの目的や状況によって、最適な販売方法は異なります。スレッズで募集が上がってくるのは、それだけ委託販売を求める作家さんのニーズが一定数あることの表れとも言えるでしょう。


委託販売の「裏の顔」――手数料を巡る本音と葛藤、そして「その先の未来」

「私の作品のおかげであなたは収入を得ているくせに!」

スレッズなどのSNSで、そんな作家さんの本音を目にすることがありますよね。なぜこのような不満が生まれるのでしょうか?それは、作家側と委託側の「見えているコスト」の違いに理由があります。

◆作家側の視点:自分の努力や才能で生み出した作品に対し、当然得られるはずの利益から引かれる手数料の重さを感じます。

◆委託側の視点:店舗の賃料、人件費、宣伝広告費、在庫管理費、配送費、ECサイトの構築・維持費など、店舗運営にかかる多くの「見えないコスト」やリスクを負っています。手数料は、これらの経費と利益を確保するために設定されているのです。

売れっ子作家の「自社販売」への移行と委託先のジレンマ

作品が売れ出すと、作家さんの中には「自分で売った方が利益率が良い」という考えが芽生えるのは自然な流れです。

◆作家側の心理:
委託販売は、初期の集客や販路開拓には有効です。しかし、作品の知名度が上がり、自身のファンが増えれば、委託手数料は「宣伝費」というよりも、次第に「販売の仲介手数料」として重く感じられるようになります。そうなると、「自分でECサイトを構築して販売しよう」「個展を開催しよう」といった形で、より多くの利益を追求したり、自身のブランドを確立したりする方向へシフトするケースが増えます。

もしも自社販売が軌道に乗らなかったり、思い通りの未来が得られなかったりした時の「帰る家」として、委託先とは良い形で関係を終える(卒業する)ことが大切です。また、たとえ成功した場合でも、ショップ運営に時間を取られて思うように作品作りの時間を確保できず、「開店休業状態」になるのを避けるため、もう一度委託販売に戻ることができる環境を残すことも大切だと言えるでしょう。

◆委託先のジレンマ:
委託先としては、発掘し、育てた作家が成長し、独立していくのはある意味「卒業」のようなものであり、ビジネスモデル上、避けられない側面があります。もちろん、宣伝や販売努力によって作家を育てた対価として手数料を得ているわけですが、作家が完全に独立してしまうと、その作家からの継続的な収入は途絶えます。

これは、まさにアイドルタレントが売れっ子になり、所属事務所から独立して個人事務所を立ち上げようとする構図に似ています。しかし、ここで一つの疑問について考えてみましょう。売れっ子になれたのははたして自分の力(容姿や歌唱力など)だけだったのでしょうか?決してそうではないと思いませんか?一人のアイドルタレントを売り出すために使った事務所側のお金や労力は計り知れません。いわば先行投資のようなものです。


そのことを踏まえても、自身が「卒業」となった時には、委託先とは良い形で独立できれば、作家さんご自身の未来にも繋がるでしょう。

委託先が「その先の未来」へ向けた戦略

委託先の立場から見て、作家の「卒業」は避けられない前提です。では、どのように持続可能なビジネスモデルを構築しているのでしょうか。主な戦略は以下の通りです。

◆新たな才能の発掘: 常に新しい才能を見つけ出し、育てていくサイクルを回すことが重要です。このサイクルのひとつが、スレッズなどのSNSでの委託募集投稿なのです。


◆既存作家との良好な関係維持:
作家が独立した後も、個展開催時の協力や限定作品の委託など、何らかの形で関係を維持できるような関係構築に努めます。作家さんが前述のように再度委託販売を依頼してくる可能性も残るため、良心的な委託料や、作品の世界観の維持(ディスプレイや梱包資材など)を心掛けた方が良いでしょう。

◆委託先自身のブランド力強化:
委託先そのものが「良い作品を見つける場所」「センスの良いショップ」として確立されれば、特定の作家がいなくなっても集客力を維持できます。募集せずとも販売してほしいと考える作家さんが自然と集まってくる、そんな理想的な状態を目指します。


委託販売に関する実務的な疑問を解消

最後に、委託販売を始める上で知っておきたい実務的な疑問について解説します。

電卓と書類/会計/税務作業

1. 委託料の支払い方法や締め日・支払日はどうなる?

支払方法: 最も一般的なのは銀行振込です。振込手数料をどちらが負担するかは契約によります。

締め日と支払日: ほとんどの委託先で月単位での清算が一般的です。例えば「毎月末日締め、翌月末払い」といった形式が多いでしょう。注意すべきは、売上発生から実際に作家にお金が振り込まれるまでに1~2ヶ月程度のタイムラグがあることが多い点です。これは、委託先での集計作業や入金確認に時間がかかるためです。支払いの際には、売上詳細が記載された支払明細書が提供されます。

2. 保管の義務と万が一の際の責任は誰が負う?

委託販売では、委託先が作家の商品を預かり、販売する形式であるため、原則として保管義務が発生します。

保管義務: 委託先は預かった作品を適切に管理する義務(善管注意義務)を負います。

万引き(盗難)や破損の責任: これは委託契約の内容によって異なりますが、トラブルを避けるためにも契約書で明確に定めることが重要です。委託先の明らかな過失(施錠忘れなど)があった場合は、委託先が損害賠償責任を負う可能性が高いです。多くの委託先は店舗保険に加入していますが、補償の範囲や条件を事前に確認しておくと安心です。

3. 売れ残った商品はどうなる?預かり期間は?

売れなかった商品の扱い: 預かり期間終了後、作家に返却されるのが一般的です。返却時の送料負担も契約で確認しましょう。委託期間の延長や、作家との相談の上での値下げ販売、ごく稀に委託先による買取といった選択肢もあります。

預かり期間の設定: ほとんどの委託販売で「3ヶ月間」「半年間」などの預かり期間が設定されています。期間満了後の自動更新や更新制、途中解約の規定なども契約書で確認が必要です。

4. 委託販売でも開業届や納税は必要?

税金に関する部分は非常に重要です。委託販売であっても、それが継続的・反復的に行われ、かつ営利を目的としているのであれば、税法上は事業と見なされ、開業届の提出が推奨されます。

年間20万円の売上:これは主に給与所得がある会社員の方が、給与所得以外の所得(事業所得または雑所得)が年間20万円を超える場合に確定申告が必要になる、という基準です。

扶養控除を受けている場合

所得が48万円以下なら所得税はかからない: 所得税の基礎控除額は48万円(令和5年時点)です。そのため、事業所得(売上から経費を引いた額)が年間48万円以下であれば、所得税はかからず、扶養から外れることもありません。ただし、住民税の申告は必要になる場合があります。

夫(配偶者)の扶養から外れるのは「所得」が48万円を超えた場合: 所得税の扶養控除においては、配偶者の「合計所得金額」が48万円を超えると扶養から外れます。もしあなたのハンドメイド事業の所得が48万円を超えると、夫(配偶者)の税金負担が増える可能性があるため注意が必要です。

社会保険の扶養(130万円の壁など): 税金の扶養とは別に、社会保険(健康保険・年金)の扶養には別の基準(一般的に年間130万円、パート・アルバイトの条件によっては106万円)があります。これは「収入」の金額で判断されることが多く、所得(収入から経費を引いた額)とは異なるため、こちらも注意が必要です。

開業届のメリット: 所得が少額でも、開業届を提出し青色申告を選択すれば、最大65万円の控除など税制上のメリットを受けられる可能性があります。

確定申告の必要性: 所得が一定額を超えれば、確定申告が必要です。これは、委託販売でも自社販売でも同じです。

税金や扶養に関する判断は、個々の状況や年によって制度が変わる場合があるため、不安な場合は必ず税務署や税理士、または健康保険組合に相談することをおすすめします。

手数料を巡る不満と「私の作品のおかげであなたは収入を得ているくせに!」の心理

スレッズなどのSNSで、「私の作品があるからこそ、あなたは儲かっているのに、こんなに手数料を取るのか!」といった、手数料に対する作家さんの不満を目にすることがありますよね。これは非常によくある話で、作家側からすると当然抱きやすい感情です。

なぜこのような不満が生まれるのでしょうか?それは、作家側と委託側の「見えているコスト」の違いに理由があります。

◆作家側の視点:
作品制作に情熱を注ぎ、試行錯誤を重ねて生み出した作品。それが売れるのは、自分の努力と才能の結果だと感じます。委託手数料が売上の10~30%であっても、売上が伸びればその絶対額は大きくなり、「こんなに取られるのか」という不満に繋がりやすくなります。特に、集客や販売促進において、委託先の努力が十分に見えない場合、不満はさらに募るでしょう。

◆委託側の視点:
委託先は、店舗の賃料、光熱費、人件費、宣伝広告費、在庫管理費、配送費、ECサイトの構築・維持費など、様々な経費をかけて運営しています。また、万が一の盗難や破損といった保管に関するリスクも負っています。手数料は、これらの運営コストと利益を確保するために設定されており、作家側からは見えにくい裏側の努力やリスクに対する対価という側面があるのです。

この「見えているコスト」のギャップこそが、手数料を巡る不満の根源となります。委託先としては、単に場所を提供するだけでなく、どのような価値を提供しているのか(集客力、ブランド力、販売ノウハウ、顧客対応、アフターフォローなど)を明確に伝え、作家との信頼関係を築くことが非常に重要になります。
このような不満を持たないようにするために、委託先選びは作品作りの大切な最初の第一歩といえるでしょう。

雑貨の受け渡し

委託販売は「通過点」であり「戦略」の一つ

今回の記事では、ハンドメイド作家さんが手数料を払ってでも委託販売を選ぶ理由から、その先のキャリアパス、さらには委託先のビジネス戦略まで、多角的に掘り下げてきました。

委託販売は、特に駆け出しの作家さんにとって、強力なスタート地点となり得ます。作品づくりに集中し、集客や販売の手間を減らしながら、実店舗での貴重な販売経験を積むことができるからです。

しかし、作家さんの成長に応じて、販売戦略を柔軟に変化させていくことが重要です。手数料の負担が増え、自分で販売した方が利益率が高くなると感じた時、独立を考えるのは自然な流れです。

●委託販売における「持続可能なサイクル」

ここで改めて強調したいのは、委託販売における「持続可能なサイクル」です。これは、まさにビジネスにおけるSDGs(持続可能な開発目標)の考え方にも通じると言えるでしょう。

●新たな才能の発掘と育成

自分の商品が認められファンが付くと、作家さんは独立という名の「卒業」をしていきます。これは、学生が学校課程を終えて卒業する様子に似ています。

その「学校」の役割を担う委託先としては、「卒業生が多くなれば、新たな『生徒』(作家)をたくさん迎え入れなければ学校(店)を維持できない」ということになります。

売れっ子になった作家が独立していくのは自然な流れであり、委託先はそのサイクルを織り込み済みでビジネスを回す必要があります。常に新しい才能を発掘し、彼らが成長できる場を提供することで、店舗やプラットフォーム自体の鮮度と魅力を保つことができるのです。スレッズなどで「委託販売募集」の投稿が頻繁に目につくのは、単に作家を増やすだけでなく、将来の「売れっ子」を見つけ出すための重要な「投資活動」と言えます。

●既存作家との良好な関係維持

目先の利益にとらわれ、過度な手数料を設定したり、作家へのサポートが手薄になったりすると、作家は離れていってしまいます。たとえ独立したとしても、良好な関係が続いていれば、限定的なコラボレーションや新作発表の場として、再度委託を依頼される可能性も出てきます。これは、委託先にとって、一度築いた信頼とネットワークを大切な資産として活用する賢明な戦略なのです。

●委託先自身のブランド力強化

最も重要なのは、委託先自身のブランド力を強化することです。「この店に置いてもらえることがステータス」「あそこのセレクトはいつもセンスがいい」といった評価を確立できれば、作家は手数料を払ってでもそこに置きたいと思うようになります。そうなると、委託先は作家を選べる立場になり、より質の高い作品や、コンセプトに合った作品を集めることが可能になります。結果的に、顧客にとっても魅力的な店舗となり、集客力もさらに向上するという好循環が生まれます。委託先が「単なる販売の場」ではなく、「価値を創造・発信する場」へと昇華することが、持続的な成長には不可欠なのです。

作家と委託先の関係は、まさに共存共栄が理想です。委託先は作家の成長を促し、作家は委託先のブランド力向上に貢献する。このバランスが取れている場所こそが、多くの作家と顧客に長く支持され、ハンドメイド業界全体の発展にも繋がっていくのではないでしょうか。