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「昨日、10万円のズボンを破きました」青年が持ち込んだ、裂けた50cmのバウハウス カーゴ

大きな『破れ』についての見積依頼をエッセイ風に綴った前編です。

カタカタとキーボードを叩き
マウスのカチカチという音だけが響いていた時
プルルルル…!
と、けたたましく電話の呼び出し音が鳴った。

メールの返信を書いていた時だったので飛び上がって驚いた。
まだドキドキと心臓が踊っていたが
慌てて受話器を取るとお問い合わせの電話だった。

「ズボンが破れたんですけど修理ってできますか?」
と、聞かれたので

「実物を見てみないと、出来るかどうか判断できませんので、直接お持ち頂けたらお見積もりできますよ。」
と、返答した。

ふと、もしも遠方の方だとわざわざ来て頂いた挙句に
「やっぱりできません。」では、申し訳ない。
慌てて
「お近くの方ですか?」と訊ねた。
すると、ご近所との事だったので受付時間などの案内をして
良かったらお越しください。
と、電話を切った。

それから程なくして、
「すみません」
と声がしたので、そちらの方を見ると二十歳前後の青年が立っていた。

「お電話の方ですか?」とお伺いすると
「はい、そうです。」と、仰ったので
こちらにご記入をお願いします。と、問診票をお渡しした。
書き終えたら声をかけてくださいとお願いして、席を外してしばらく待った。

問診票を受け取り 確認すると、他のお店でも 見積もりをしてもらったようで、〇が付けてあった。
電話でお聞きした通り、ズボンの破れ修理と記載されていた。
「ズボンが破れたんですよね?」
と聞くと
「これって直ります?」
と、カサカサと紙袋から黒いズボンを取り出して 受付台に置いた。

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手に取って拝見してみると、後ろがかなり大きく破れていた。 ズボンの左側の中心近くをウエストから太ももにかけて 約50㎝ほど縦に裂けていた。 よく見ると、同じように縦に50㎝ほどもう1箇所裂けがあった。 合計2か所の大きな破れだった。

拝見した瞬間に
「これは修理したとしても、どれぐらいもつだろう?」
と、強度の問題が頭をよぎった。
穴を塞ぐだけなら何とかなるが
またすぐに破れてしまったら、元も子もない。
わざわざお直しする意味がなくなってしまう。

こういう裂け方をする時は生地自体が弱くなっている事が多い。
新しい布だと、裂こうと思ったらギュッと力を入れて引っ張らないと、こんなに大きくは裂けないものだ。

布地の強度の確認のため、
「どれぐらい着用されましたか?」と、訊ねると
「古着で買ったので。」との事だった。
前の持ち主が、何年くらい着用したのかはわからないそうだ。

経年劣化で生地自体が弱っている可能性があることや、
修繕してもどれくらい持つかわからないこと、
別の場所が破れる恐れがあることなど
修理後のリスクについて詳しく説明した。

すると

「昨日初めて穿いて、破いちゃったんです。これ、10万くらいしたんで、直してまた穿きたいんですよ。」

ええ〜!
一度しか穿いていないのに大きく裂けてしまったことや金額など
色々驚きの情報が一度に入ってきて
脳が少々パニックになってしまった。

「10万円もするんですか!!」
と目を丸くして、驚きながら訊ねた。
すると

「新品だったら、20万くらいするんですよ」
と、さらに追い討ちをかけられた。

世の中には高価な洋服はたくさんあるが、
目の前に置かれた『大きく破れた10万円のズボン』というのは衝撃的で、かなりの破壊力があった。

どういう状態で破れたのかも修理する上で重要な情報なので、
詳細についてお伺いすることにした。

昨日友達と飲みに行き、ふざけていて転んでしまったとの事。
どういう風な状況で破れたのか、あまり詳しくは覚えていないらしい。
友達に破れていることを指摘されて 初めて破れたことを知ったそうだ。

「穿いたばかりなのに、ショックですよね…」
と声をかけながら、
もし自分だったらどうなっただろう?
原付バイクが軽く買える金額だ。
そう考えると気が遠くなりそうだ。

『失礼ですが、これはどこのブランドですか?』
と、つい興味本位からでた質問の答えが
私の職人辞典に新しいページが1枚増えることになるとは、この時は全く予想もしていなかった。